1982 年 11 巻 6 号 p. 1054-1057
本研究では、まずアセテートやバィカーボネートといつたアルカリ化剤を用いた場合の体液pH変動機構を定量的に取り扱う為に、透析中の血中アセテート濃度、バイカーボネート濃度、CO2 gas濃度及びpHの変動をシミユレートするプールモデルを作成した。その結果、アセテート透析では血中CO2 gas濃度の低下がpHの改善に大きく寄与していることが分つた。一方バィカーボネート透析ではカルシウム塩の沈澱を生成して、装置への悪影響及び体内からのカルシウムイオンの流出といつた問題が予測された。また以上の結果にもとづき、イントレランスの発症や、沈澱の生成を起こすことなく透析治療を行なうには、アセテートとバイカーボネートを同時に使用することが好ましいことが分つた。そこで各患者の代謝能力に応じて至適透析液組成を決定した。