抄録
鍼の鎮痛効果を増強する物質とされるD型フェニルアラニン (DPA) を, 各種疼痛性疾患に前投薬として応用, その臨床的な効果を検討した。
方法は, 当科を訪れた比較的慢性化した顔面痛, 後頚部痛, 五十肩, 腰下肢痛, 膝痛を訴える患者 (計24名) を対象とし, 1名の患者につきあらかじめDPAを0.5g術前投与させたのち, 鍼治療 (2回) した直後効果とプラシーボ (乳糖) 群 (2回) とを比較して二重盲検法で行った。鍼治療は各々の症状に対して, 対照群, 試験群ともに昭和55年度, 日本鍼灸師会経穴委員会が報告した臨床的に使用頻度の高い経穴を選穴することを基準とし, 低周波置鍼療法を行った。
その結果, 各種疼痛疾患患者における効果は, DPAを術前投与したのち鍼治療を行ったところ, プラシーボ群に比較して著効・有効率が30%上昇することを認められた。疼痛疾患に対して, DPAを術前投与しておくと, 鍼における鎮痛効果の増強が認められた。