1986 年 28 巻 2 号 p. 654-661
歯周疾患の治療を行うための基礎となる疫学的調査を従来, あまり行なわれていない精神病患者を対象に行い, その患者における歯周疾患の罹患状況, 歯科治療に対する意識調査およびその予防対策などについて精神科医と共に検討してみた。対象は山梨療養所に入院加療中の精神病患者219名で, 歯周疾患の罹患状況は219名全員に, そしてそのうち42名に詳細な口腔内診査, 44名に対して歯科治療に対する意識調査, そしてその中の12名には刷掃指導を行った。その結果, 精神病患者の歯周疾患罹患率は, 一般正常成人に比べて高く, さらに, 歯科治療に対する意識調査では一般正常成人との間に差は認められなかったが, 刷掃指導に対するモチベーションは刷掃の理論づけ (意識的) を行うよりも, 「磨きなさい」と言う動作的な指導から行ったほうが効果的であった。また, 精神病患者に対する刷掃指導は, 精神科領域の治療の一助にもなることが示唆された。