日本臨床免疫学会会誌
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B型肝炎ウイルスの血清pre-S (1)抗原とpre-S (2)抗原の臨床的意義
岩崎 良章松浦 一陽池田 弘能祖 一裕高口 浩一下村 宏之山吹 隆寛辻 孝夫
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1989 年 12 巻 2 号 p. 259-263

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抄録

B型肝炎ウイルス(HBV)のHBV-DNAの遺伝子座pre-S (1), pre-S (2)領域でコードされたポリペプチドを,そのモノクローナル抗体を用いてELISA法で測定し, HBVのpre-S (1)抗原, pre-S (2)抗原の臨床的意義を検討したものである.その結果, pre-S (1)抗原値とHBV-DNA値とは, HBV-無症候性キャリアー(ASC) [n=40]でr=0.800 (p<0.01), B型慢性肝炎(CH) [n=60]でr=0.730 (p<0.01)で, pre-S (2)抗原値とHBV-DNA値とは, ASCでr=0.675 (p<0.01), CHでr=0,575 (p<0.01)で相関したが, pre-S (1)抗原値の方がHBV-DNA値とよく相関した. S-GPTの急性増悪の前後1ヵ月でこれらHBV-マーカーの推移を検討すると, pre-S (1)抗原値は, HBV-DNA値と同様の変動を示しS-GPTの正常化の有無にかかわらず急性増悪後低値となった.しかし, pre-S (2)抗原値は,低値になるとS-GPTは正常化することが多いが,低下の程度が悪いとS-GPT異常が続くことがわかった. HBVのpre-S (1)抗原値は, HBV-DNA値とよく相関すること, pre-S (2)抗原値は, B型肝炎の予後を推測するHBV-マーカーとして臨床的に有用であることが示唆された.

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