目的: 市販接着性レジンセメントがほかの合着用セメントと比較して, 補綴物の合着に適しているかどうか検討する.
方法: 9種の接着性レジンセメントと2種のレジン添加型グラスアイオノマーセメントおよび1種のグラスアイオノマーセメントを用い, ヒト大臼歯象牙質にSUS304ステンレス鋼を各10試料ずつ指定の処理条件により接着した後, せん断接着試験を行った.また, エッチング剤, プライマー処理後の象牙質の表面性状を走査型電子顕微鏡にて観察を行い, 処理剤のpH値と象牙質表面の脱灰量との相関関係を調べた.
結果: すべての接着性レジンセメントはレジン添加型グラスアイオノマーセメント, グラスアイオノマーセメントと比較し, 有意に高い接着強さを示した.接着性レジンセメントのうち, スコッチボンドレジンセメント, パナビアフルオロセメント (ADゲル法) は, パナビアフルオロセメント (通法), クシーノセムと比較して有意に高い接着強さを示した.また, 各種プライマーの象牙質表面に対する脱灰作用の大きさは, 必ずしもそのpH値と相関関係は認められなかった.
結論: 象牙質表面に対する初期接着強さから, 接着性レジンセメントはほかの合着用セメントと比較して, 補綴物合着用として優れたセメントであることが結論づけられた.