日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
穿孔性胃潰瘍による腹膜炎術後に発症した孤立性脾膿瘍の1例
木山 輝郎田尻 孝吉行 俊郎谷合 信彦内田 英二徳永 昭
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 64 巻 12 号 p. 3148-3151

詳細
抄録

脾膿瘍は稀であるが,穿孔性胃潰瘍術後に孤立性脾膿瘍を合併した症例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.腹痛を自覚してから2週間後に来院.穿孔性胃潰瘍による腹膜炎に対し広範囲胃切除およびドレナージを行った.腹膜炎は炎症が高度で術前CT検査にて大網による腫瘤形成をみとめた.腹水中からは連鎖球菌が検出された.術後1日目には解熱し,抗菌剤を5日間投与した.術後経過は良好であったが,術後14日目に弛張熱と上腹部痛が再燃した.抗菌剤の投与を行うとともに, CT検査にて孤立性脾膿瘍と診断した.抗菌剤を3週間投与後には血液検査で炎症反応が消退, CT検査でも膿瘍は縮小した.術後37日目に軽快退院した.脾膿瘍は先行する感染症が消退してからでも発症することから,患者が一旦回復した後の発熱や腹痛に際しては脾膿瘍を念頭においた画像診断を行うことが必要である.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top