盛土の引張り補強用の石油高分子ジオテキスタイル補強材は、金属製補強材と比較すると剛性が低くクリープ変形しやすい。このことから、長期材令に対する設計引張り強度を、ひずみ速度1%/分程度の引張り試験で得られた引張り強度を1.0よりもかなり大きなクリープ破断に対する安全率で除して求めている。この方法は、以下の理由によって不合理である。従来の設計法は「クリープは劣化現象であり引張り強度は時間経過とともに減少する」という誤解を与えるが、クリープ変形は劣化現象ではなく材料粘性による応答である。引張り破断強度は破断時のひずみ速度に支配され、クリープ破断しない限りクリープ変形履歴に影響されない。地震時に生じる補強材の残留変形も荷重増加と粘性によるものであり、特にクリープ破断に対する安全率を考慮する必要がない。通常のジオテキスタイル補強盛土では、常時にジオテキスタイル補強材は引張り力が時間的に低減していて、クリープ破壊の可能性は非常に低いと考えられる。時間的な材料劣化が無い場合に対して、クリープ破断に対する安全率を用いず想定した破壊時のひずみ速度で引張り破断強度を定義する方法を提案する。