日本補綴歯科学会雑誌
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実験用口蓋床の厚さと材質が味覚閾値に及ぼす影響
古谷 暢子吉仲 正記池邉 一典小野 高裕野首 孝祠
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2004 年 48 巻 1 号 p. 67-73

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抄録

目的: 本研究の目的は, 硬口蓋を被覆する義歯床の材質や厚さが味覚に及ぼす影響について検討することである。
方法: 習慣的な喫煙経験がなく, 歯の欠損が認められない20名 (男性11名, 女性9名, 平均年齢25.1±2.8歳) を被験者とした.まず, 全口腔法と咀嚼法による味覚検査を塩味と苦味について行った.3種類の実験用口蓋床として, 硬口蓋を被覆する厚さ1.5mmのレジン床 (1.5R床) および金属床 (1.5M床) と厚さ0.5mmの金属床 (0.5M床) をそれぞれ製作し, 非装着時と各床装着時において認知閾値を測定した.次に, 同じ測定条件においてグミゼリーを用いた咀嚼能率検査を行った.
結果: 全口腔法による味覚検査では, 塩味は床装着による変化は認められなかった.一方, 苦味は1.5R床装着時と1.5M床装着時では, 有意な差は認められなかったが, 0.5M床装着時は, 1.5R床および1.5M床装着時と比較すると有意に小さい認知閾値となった.咀嚼法による味覚検査では, 塩味および苦味いずれにおいても, 全口腔法の苦味と同様の結果であった.単位時間あたりの咀嚼能率では, 0.5M床は, 1.5R床および1, 5M床と比較すると有意に高い値を示した.
結論: 厚さを薄くすることが可能である金属床の選択は, 味覚の点から有用であること, さらにより短時間に食物の細分化を行うことができることが示唆された.

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