2004 年 3 巻 2 号 p. 220-226
京都市内の高校柔道部内におけるTrichophyton tonsuransによる体部白癬の集団発生例を経験した。患者は15~17歳の男子高校生および47歳男性顧問の計20名。皮疹は頭部,顔面の他,柔道着で覆われている体幹部にも認めた。診察した20名のうち苛性カリウム(KOH)直接検鏡では10名が陽性,鱗屑からの培養では4例のみにコロニーの生育が認められ(うち2名はKOH直接検鏡,培養ともに陽性),白癬と診断した。8名は真菌検査では確認できなかったものの,視診上白癬を疑わせる皮疹が認められた。従来の形態学的分類に加え,PCR-RFLPを用いた遺伝子学的所見からTrichophyton tonsuransと診断した。同校の道場から採取した塵埃の培養からも同菌が単離された。さらにPCR法を用いた種菌レベルの迅速診断法の開発を試みた。