日本医真菌学会雑誌
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抗真菌薬はアトピー性皮膚炎患者T細胞のIL-4,IL-5産生を抑制する
神田 奈緒子
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2004 年 45 巻 3 号 p. 137-142

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抄録

アトピー性皮膚炎患者の治療に抗真菌薬が有効であることが報告されている.アトピー性皮膚炎患者および健常者の末梢血T細胞の抗CD3,CD28抗体刺激によるTh1,Th2サイトカイン産生に対する抗真菌薬の作用について検討した.抗CD3,CD28抗体で刺激したT細胞のIL-4,IL-5の放出量はアトピー性皮膚炎患者では健常者と比較して高かった.アゾール系抗真菌薬ケトコナゾール,イトラコナゾール,ミコナゾール,非アゾール系抗真菌薬テルビナフィン,トルナフタートはアトピー性皮膚炎患者および健常者T細胞のIL-4,IL-5の放出を抑制したが,IFN-γ,IL-2の放出は抑制しなかった.アゾール系抗真菌薬は非アゾール系抗真菌薬より強力な抑制作用を示した.これらの抗真菌薬はJurkat T細胞においてIL-4, IL-5 promoter活性を抑制した.cAMPアナログは抗真菌薬のIL-4,IL-5産生抑制作用を解除した.抗CD3,CD28抗体刺激によりT細胞内のcAMP濃度は一過性に増加し,抗真菌薬はこのcAMPの増加を抑制した.アゾール系抗真菌薬はcAMPを産生するacenylate cyclaseを抑制し,非アゾール系抗真菌薬はcAMPを分解するcyclic nucleotide phosphodiesterase活性を増強した.抗真菌薬はcAMPシグナルの抑制を介してT細胞のIL-4,IL-5産生を抑制し,アトピー性皮膚炎患者のTh2偏位を是正すると考えられる.

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