昭和医学会雑誌
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ESBLs産生グラム陰性桿菌の疫学調査におけるゲノム型の有用性
中島 修福地 邦彦五味 邦英
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2004 年 64 巻 4 号 p. 332-339

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抄録

昭和大学病院において2001年2月から7月の6カ月間にMIC測定とクラブラン酸抑制試験により検出されたE. coli205株のうち5株 (2.4%) , K.pneumoniae93株のうち3株 (3.2%) とK. oxytoca52株のうち2株 (3.8%) がESBLs産生と判定された.ESBLs産生と判定されたE. coli, K. pneumoniaeおよびK. oxytocaのSpe I消化後のパルスフィールド電気泳動パターンによる分子疫学解析を行ったところ, E. coliの2株, K. pneumoniaeの2株, およびK.oxytocaの2株が同一のゲノム型であった.しかし, 同一ゲノム型であってもE.coliK. oxytocaはそれぞれ異なるMICパターンを示した.さらに, これら分離菌のTEM型β-1actamase遺伝子の存在をPCRで確認したところ, 同一ゲノム型を示したE.coliの2株と, K.pneumoniaeの1株で検出された.これらTEM型β-lactamase遺伝子の塩基配列解析の結果, これらは既知のESBL変異とは一致しておらず, さらに, 3株由来のTEM型β-lactamase遺伝子配列は同一ではなかった.
ESBLs産生グラム陰性桿菌は, 耐性責任遺伝子が多数あるため, MICパターンや, 耐性責任遺伝子解析では感染経路に関わる十分な情報が得られない.このため, ESBLs産生グラム陰性桿菌による院内感染防止のための疫学解析にはゲノム型解析が必須といえる.

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