2004 年 65 巻 10 号 p. 2647-2651
Toxic shock syndrome (TSS)は,黄色ブドウ球菌が産生する外毒素により突然の高熱,血圧低下,紅斑などの様々な症状を呈し,急激に多臓器不全を発症し重症例では死に至る中毒性疾患である.胃切除後の確定的TSSの本邦報告例は稀である.最近,われわれは胃癌術後に発症したTSS症例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.早期胃癌に対し噴門側胃切除術を施行した.術後2日目より突然39℃台の発熱が出現し血圧が低下し乏尿となった.また体幹を中心に紅斑が出現し,肝機能障害がみられた.術後5日目から水様性下痢が出現し, ARDSとDICを併発した.便および感染創の膿よりMRSAが検出された.このMRSAはtoxic shock syndrome toxine-1 (TSST-1)産生株でありTSSと診断した. VCMを投与し,感染巣のドレナージと多臓器不全に対する集中治療により病態は改善し救命できた.