第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
バイカル湖湖底堆積物の粒子密度変化が示す過去約650万年間の気候変遷
岩本 直哉川口 優美井内 美郎
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 44 巻 2 号 p. 79-92

詳細
抄録

バイカル湖で1998年に掘削されたコア(BDP 98)の粒子密度プロファイルより,バイカル湖の過去約650万年間の珪藻生産量と気候変動を推定した.BDP 98コアの粒子密度は,堆積物中の珪藻殻濃度を強く反映している.一般に,温暖期には珪藻殻に富んだ堆積物,寒冷期にはほとんど珪藻殻を含まない細粒な粘土質堆積物が堆積する.これらのことを用いて,バイカル湖周辺域の気候変遷史の復元を試みた.BDP 98コアの密度測定結果より,バイカル湖周辺域の過去650万年間の気候変遷は大きく3つの時代に分けることができる.
その最新期にあたる第四紀の粒子密度は,海洋コアの底生有孔虫の酸素同位体比の変動パターンと,数万年スケールでよく類似している.そのため,この時代の堆積年代・堆積速度は,BDP 98コアの粒子密度プロファイルを酸素同位体比曲線に対比することにより推定できる.BDP 98コアの粒子密度は,堆積物中の珪藻殻濃度を強く反映していることから,粒子密度より生物源シリカ含有率を推定できる.これらの堆積速度と生物源シリカ含有率から,珪藻生産量(生物源シリカフラックス)を推定し,その増減を気候変動のプロクシーとした.その結果,汎世界的な気候変動との同調性が認識されるとともに,バイカル湖特有の気候イベントのいくつかが見いだされた.

著者関連情報
© 日本第四紀学会
次の記事
feedback
Top