医療と社会
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研究論文
離散型比例ハザード・モデルと順序プロビット・モデルによる大腿骨頚部骨折における在院日数と退院時歩行能力の分析
縄田 和満渡邊 園子新田 章子川渕 孝一
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2005 年 14 巻 4 号 p. 4_99-4_115

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抄録

 我が国においては医療費の増加が大きな問題となっている。このため,長期入院の解消による平均在院日数の短縮化が国の政策的課題になっている。平成14年4月の診療報酬改定でも,一般病院の平均在院日数要件が短縮されるなどの改定が行われている。診療報酬の改定が在院日数や治療成果にどのような影響を与えたかの評価は今後の診療報酬改定などの医療政策を考える上で重要である。本論文では,大腿骨頚部骨折で入院し,人工骨頭置換術・骨接合術を行った患者のデータを用いて,在院日数と治療成果(退院時歩行能力)に対して平成14年4月の診療報酬改定の影響の評価を行うとともに,これらに影響する因子について分析を行った。在院日数に関しては離散型の比例ハザード・モデルを,歩行能力に関しては順序プロビット・モデルを用いて実証的に検討した。この結果,平成14年4月の診療報酬改定は在院日数を有意に短縮させているとは認められなかった。一方,退院時歩行能力は診療報酬改定後,有意に低下したことが認められた。この他,在院日数に影響すると認められたのは,セメントの使用,術後感染症,術後合併症に関する因子であった。また,退院時歩行能力の改善に関連があると認められたのは,入院時歩行能力の他,痴呆症状,術後感染症,術後合併症,退院先,住居状況に関する因子であった。術後感染症,術後合併症の発症は治療成果に悪影響を及ぼすばかりでなく在院日数も増加させるため,治療成果・医療費抑制の両面からそれらの予防の重要性が示唆された。

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© 2005 公益財団法人 医療科学研究所
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