日本薬理学雑誌
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特集:薬物依存の評価法と戦略
薬物依存・毒性発現にかかわる分子の分子生物学的検索法
―網羅的プロファイリングを中心に
浅沼 幹人宮崎 育子
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2005 年 126 巻 1 号 p. 30-34

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抄録

従来,ある事象に関与すると考えられる分子の同定は,既知の関与分子と連関のあると報告された分子の発現の増減を一つ一つ確認していく,あるいは既知の分子と結合するタンパクをFar-Western法,two-hybrid法などで見つけていくという手法が用いられてきた.しかし,これではある事象に関与する既知の分子機構の枠を越えた新たな分子機構を発見したり,新たな観点に基づく分子仮説を提唱できるような発見をすることは難しかった.これに対して,10-20年前から,ある事象で発現が増減しているmRNAをスクリーニングする手法として,differential display法とそれに続くライブラリースクリーニング,RACE法などが広く用いられ,キット化された.さらに,近年1,000-10,000ものcDNA断片をブロットしたナイロン・グラス・プラスチックcDNAアレイが市販あるいはオーダーメードされるようになり,様々な生物学的・病理学的事象で発現が変化している遺伝子の網羅的検索が可能になった.近年のポストゲノムの潮流と遺伝子とタンパクの発現の乖離から,二次元電気泳動などによる発現タンパクのスクリーニング,さらに抗体がブロットされた抗体アレイを用いてのタンパク発現の網羅的検索も可能になってきている.しかし,これらの網羅的検索法はそれぞれ長所および短所,限界を有しており,目的に応じて使い分ける必要がある.本稿では,主に覚醒剤の急性毒性発現にかかわる遺伝子・分子の分子生物学的網羅的検索法の自検例を交えて,それらの長所・短所について概説する.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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