情報地質
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論説
「定常的群集変遷モデル」を用いた放散虫化石群集の解析
桑原 希世子八尾 昭
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2004 年 15 巻 3 号 p. 151-157

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抄録

一般に放散虫化石群集は数十種から数百種という多くの種で構成されている.連続層序断面における複数層準からの産出データに基づいて,各種のレンジを見積もることができる.中位層準から見つからず,下位や上位からは見つかる種があった場合,その種は中位層準に存在していたが,見つからない補間種とみなされる.それゆえ,中位層準の種数は実際の検出種数に補間種数を加えたものとなる.しかし,最下位や最上位の層準の種数は実際の検出種数にとどまる.群集変遷を論じるにあたってはこの中位層準における「みかけ上の効果」を考慮することが必要である.
本研究では「定常的群集変遷モデル」を次の条件で作成した:セクションを通じて,各層準の構成種数,出現率・絶滅率,検出率が一定,層準間隔が時間的に一定であるとする.このモデルを使うと,任意の層準での種数を見積もることが可能となる.実際のデータとモデルを比較することで絶滅や出現パターンを比較することができ,ペルム紀新世およびジュラ紀中世のサンプルにおいての議論を行った.ペルム紀新世を通じて放散虫類は一定の繁栄をしているようにみえ,ペルム紀末に向かっての減少傾向は検出されない.ジュラ紀中世においては,放散虫の出現率は増加するようにみえる.

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