2005 年 4 巻 4 号 p. 429-433
モモの成熟果の果肉が水浸状になって褐変する“あん入り症”について, その特徴ならびに障害発生の品種および年次間差などを調査した. 障害発生率は‘川中島白桃’, ‘紅清水’および‘華清水’で高かった. ‘華清水’では発生率が年によって変動した. 障害発生は, いずれの品種も縫合線の反対側に多く, 側面部がこれに次ぎ, 縫合線側で少なかった. 障害果は正常果よりも果実重が優れ, 全糖, スクロース, ソルビトール, 水溶性ペクチンおよび全フェノールの含量が多い一方, 果肉硬度, 全アミノ酸含量および塩酸可溶性ペクチン含量が少なかった. 糖含量は果実の部位によって異なり, 側面部で最も多く, 縫合線の反対側がこれに次ぎ, 縫合線側で少なかった. 障害果は果実が収穫熟度に達して初めて認められた. 以上の結果から, モモの“あん入り症”は他産地で報告されている“みつ症”や“果肉褐変症”と同一の障害であると考えられ, 共通の用語として“水浸状果肉褐変症”を提案した.