2005 年 53 巻 4 号 p. 439-446
両側回遊性エビ類が棲息する山口県西田川において, 河川淡水域で幼生の流下を, 河口とその周辺でプランクトンネットを用いて幼生の分布を, 河口の感潮域で藻状人工基質を使って稚エビの加入をそれぞれ調査した。西田川では, 2科4種の両側回遊性エビ類のゾエアが日没直後の短時間に集中して流下しており, これらは全て第1期ゾエアであった。1998年には, 本河川から約600万個体の幼生が流出したと推計された。しかし, 河口付近では, 幼生はほとんど採集されなかった。一方, 感潮域では, 棲息種以外の稚エビの加入が確認された。以上のことより, 両側回遊性エビ類は外海を通して広域に分散し, 遠方の河川に遡上する個体もあることが推察された。