日本消化器内視鏡学会雑誌
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アフタ様腸病変からみた大腸炎症性疾患の鑑別診断に関する検討
井上 拓也平田 一郎年名 謙阿部 洋介泉屋 隆森田 英次郎村野 直子安本 真悟村野 実之西川 貴士浜本 順博中川 憲勝 健一
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2006 年 48 巻 2 号 p. 176-182

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抄録

当院で過去6年間に経験したアフタ様腸病変を有する74例(男女比1:1,平均年齢51.4歳)について,病変の内視鏡像を中心に,大腸炎症性疾患の鑑別診断に関する臨床的検討を行った.アフタ様腸病変は,内視鏡像により肉眼形態を,A群(小発赤型),B群(アフタ型),C群(びらん・小潰瘍型)の3群に分類した.病変の分布に関してはA群では直腸からS状結腸に主として認めたのに対し,C群では横行結腸以深に優位に多く認めた.アフタ様病変を有する大腸炎症性疾患の内訳は,原因不明が59.4%,感染性腸炎12.2%,虚血性腸炎8.1%,潰瘍性大腸炎(疑診例を含む)12,2%,Crohn病5.4%,その他2.7%であった.アフタ様病変の形態別にみた疾患頻度はA群の68.0%,B群の74.2%は原因不明例であったのに対し,C群では感染性腸炎や虚血性腸炎が多く(66,7%)認められた.疾患別にみたアフタ様病変の形態頻度は,クローン病では50%がC群を呈したのに対し,潰瘍性大腸炎では全例がA群もしくはB群の内視鏡像を呈し,鑑別診断に有用な所見であると考えられた.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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