胃形質細胞腫は本邦でも報告が増えつつあるが,術前に病理組織診断までがなされることは稀である.今回,術前診断しえた胃形質細胞腫を経験したので報告する.症例は71歳,男性,検診の胃造影検査で指摘された異常陰影の精査を目的に当科を受診した.胃内視鏡検査では,前庭部大彎にイモムシ状隆起を,胃角部大彎に周囲が浮腫状に隆起したびらんを認めた.胃角部病変の超音波内視鏡検査では第二層の肥厚および第三層との融合像を認め,粘膜深層に向かって発育する深達度SMの腫瘍性病変を考えた.それぞれにstrip-biopsyを施行し,粘膜層から粘膜下層にかけてRussel body, Dutcher bodyを伴う形質細胞の増生を認めた.生検組織の免疫染色ではIgA (λ鎖)のグロブリン産生性を示していた.胃形質細胞腫と術前診断し,幽門側胃切除術を施行した.最終病理診断は術前同様胃形質細胞腫と診断された.現在,術後13年目になるが再発なく生存中である.