園芸学研究
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栽培管理・作型
12月加温作型のブドウ‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’における夏季施肥および夏季せん定が秋季の樹体および秋施肥成分の吸収に及ぼす影響
村谷 恵子田村 史人
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キーワード: カリウム, リン酸, 窒素
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2006 年 5 巻 2 号 p. 117-122

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抄録

養液栽培した12月加温作型ブドウ‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’を用いて,夏季せん定および夏季の施肥量が秋季の結果母枝の葉色・登熟および秋季に施肥した肥料成分の吸収に及ぼす影響を検討した.夏季せん定した樹および夏季せん定をしない慣行の枝管理中の両者について,収穫後夏季(6~7月)には3水準(窒素施肥量で15,10および5 g・m-2,以下15 g,10 gおよび5 g区),秋季(9~10月)には一定量(12 g・m-2)の化学肥料を施肥し,結果母枝の葉色・登熟率および秋季の培養液中の窒素,リン酸およびカリウムの濃度を調査した.
秋季(10月中旬)の結果母枝の葉色は,15 g区および10 g区が5 g区よりも濃く,結果母枝の登熟は10 g区が早く,15 g区がこれに次ぎ,5 g区が遅れた.
夏季せん定は,秋季の培養液中窒素濃度の変動過程に影響を及ぼさなかった.
秋季の窒素の吸収は5 g区が15 g区および10 g区に比べ,常に早く,吸収量は多く,調査終了時の12月上旬には,ほとんどの秋季施用窒素は吸収された.15 g区と10 g区との間で,吸収パターンはほとんど異ならなかった.秋季のリン酸吸収は,夏季の施肥処理の違いに影響されず,いずれの区でも,12月上旬には施用した量のほとんどを吸収した.カリウムの吸収は,窒素と同様に5 g区が15 g区,10 g区より常に早く,吸収量も多かった.しかし,窒素の場合と異なり,5 g区であっても秋季に施用したカリウムの一部は12月上旬まで吸収されず,残存した.
以上の結果から,12月加温作型のアレキにおいては,収穫後・夏季の施肥量が多いと,秋季に施用した窒素,カリウムの吸収が抑制されると考えられた.

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