2006 年 54 巻 2 号 p. 217-224
北海道南西部の日本海沿岸で見られる藻場の消失に, 植食性小型巻貝類が及ぼす影響について調べる上で必要となる基礎的知見を得ることを目的に, 研究を実施した。まず, 小型巻貝4種 (クボガイ, コシダカガンガラ, エゾサンショウ, クロタマキビ) によるホソメコンブに対する摂餌痕跡を室内実験で観察した。スチロール樹脂製容器とスライドグラスに着生させたホソメコンブの配偶体をこれら4種の巻貝に摂餌させたところ, すべての巻貝種で配偶体の摂餌が継続的に確認され, 巻貝種間で特徴の異なる摂餌痕跡が観察された。この摂餌痕跡の種間差は, 歯舌の形態と大きさや摂餌様式が巻貝種間で異なることが影響したと考えられた。次に, 野外で採集したホソメコンブの胞子体を観察したところ, 小型巻貝による歯舌の痕跡と思われる形跡が多数観察された。以上から, 植食性小型巻貝がホソメコンブ群落に何らかの影響を与える可能性が示唆された。