2006 年 47 巻 3 号 p. 156-161
長い地球史には, 自然の変化の膨大な記録とともに, 人類が将来にわたって自然環境に順応・共存していくための無数のヒントが埋もれていると考えられる. 過去の記録は将来の自然の変化を予測するのに貴重な情報源となるが, それを人間や社会にとっての自然環境の予測に活用するには, いくつかの変換が必要である.
地質学的な自然現象を人間感覚の時間・空間スケールに読み替えていかねばならないし, 人間社会への影響が多様な自然現象の複合によることを考慮して, 内容, 大きさ, 変化を推定していかねばならない. これには, 人間社会の側から自然をみる応用地質学が重要な役割を果たし得ると考えられる. 急拡大してきた人間活動による自然への負荷とその規制も, こうした視点のもとに地球史を振り返ることで, 議論をより具体的なものにできるであろう.