都内U型形状の半地下構造RC擁壁において、主働側に残留水平変位が数年に亘って継続的にかなり増加した。模型実験の結果も総合して考えると、この現象は、RC擁壁に大気温の繰返し変動による熱膨張収縮のために繰返し水平変位が生じて、このために壁面に作用する土圧が増加するためであると推測された。擁壁の繰返し水平変位によって土圧が増加するのは、(1)盛土が弾塑性的に非可逆変形するとともに、(2)粘性と繰返し載荷により主働側に残留変位が進行し、(3)繰返し載荷により盛土の剛性が増大するためと推察された。室内模型実験によって、剛な一体壁面工の背面に結合した高分子ジオグリッド補強材を盛土内に水平に敷設する工法の効果を検討した。この工法により、壁面工が繰返し水平変位しても盛土内の主働すべり面の発生を抑制して盛土天端での残留沈下を防ぎ、また壁面工を土圧増加に対して構造的に強化し、仮に土圧が増加した場合でも壁面工の残留主働変位を抑制できることが分かった。この工法は、新設の擁壁に有効であると考えられる。