2006 年 54 巻 3 号 p. 375-381
北海道南西部の日本海沿岸で見られる藻場の消失に, 植食性小型巻貝類が及ぼす影響を解明する上で必要となる基礎的知見を得ることを目的に, 小型巻貝によるホソメコンブの摂食に水温が及ぼす影響を室内実験によって検討した。まず, コシダカガンガラを用いて, スライドグラスとスチロール樹脂製容器に着生させたホソメコンブ配偶体に対する摂食実験を, 水温5℃, 10℃, 15℃の3条件下でおこなった。コシダカガンガラによる配偶体の摂食量は, 水温が高いほど多くなる傾向が認められたが, 低水温の5℃であっても, コシダカガンガラは配偶体を摂食した。次に, コシダカガンガラとクボガイを用いて, ホソメコンブの幼胞子体 (葉長3cm程度) に対する摂食実験を, 水温10℃と15℃の2条件下で実施した。クボガイでは, 水温条件に関わらず幼胞子体に対する活発な摂食が認められたが, コシダカガンガラでは, 幼胞子体への摂食はほとんど見られなかった。以上から, 植食性小型巻貝によるホソメコンブ群落に対する影響は, 水温条件と巻貝種によって異なる可能性が示唆された。