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異なる3種の官能基を持つL-システイン酸とL-システインの反応性の同時解析
今泉 洋長澤 智史狩野 直樹
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2006 年 55 巻 12 号 p. 709-718

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抄録

生態系に及ぼすトリチウム (3H又はT) の影響とHを含む物質の反応性を明らかにするため, 同一分子内に異なる3種の官能基を持つL-システイン酸とL-システインの反応性を追究した。これらの物質とHTO蒸気との間の水素同位体交換反応 (T-for-H交換反応) を50~70℃の温度範囲で観測し, 得られたデータとA″-McKayプロット法とを用いて各々の反応を解析した結果, 次のことが明らかになった。 (1) 異なる3種の官能基を持つこれらの化合物中の各官能基の反応性は温度の上昇に伴い増加する。 (2) L-システイン酸中のSO3H基の反応性は, COOH基の反応性のおよそ2.6倍であり, NH2基の反応性のおよそ5.8倍である。 (3) L-システイン中のSH基の反応性は, COOH基の反応性のおよそ1.4倍であり, NH2基の反応性のおよそ3.5倍である。 (4) NH2基は電子求引性の大きい置換基が置換すると反応が促進されるが, COOH基ではあまり影響がない。 (5) 異なる3種の官能基を持つ脂肪族化合物について, A″-McKayプロット法を使うと, その物質の反応性を, マスク剤等を使わないで非破壊的・同時分析的に明らかにできる。 (6) ある種の物質へのT取込みの程度を, 非破壊的・定量的に明らかにできる。 (7) 本研究で得られた結果は, 環境中のT汚染防止のために役立ち, また今後, 複数の官能基を持つある種の物質の反応性を追究するための解析手法として役立つ。

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