2006 年 27 巻 3 号 p. 262-266
言語習得期前難聴児が示す言語発達の経過は非常に多様であり,聴能訓練が順調に推移した症例が必ずしも良好な経過をたどるとは限らない。難聴児における学習障害の合併率は10%前後と報告されており,その中核症状である発達性dyslexiaが存在すると,難聴児の言語発達には大きな影響を受ける。しかし学齢期の前にスクリーニングすることはきわめて困難であり,難聴要因を加味して検討することはさらに困難である。今回学齢前児37名を対象として,読み書きに必要な認知能力の精査を行った。実施した検査はレイベン色彩マトリックス検査SetA(RCPM),言語発達遅滞検査(S-S法),ベントン視覚記銘力検査,音韻認識処理課題,かな一文字の書字及び読字課題を実施した。結果,(1)S-SやRCPMはカットオフの指標として有用である。(2)かな読字は月齢と相関しない。書字は月齢60カ月を境に急速に達成可能となる傾向が明らかとなった。