肺癌
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第21回肺癌集検セミナー
現在の肺がん集団検診における問題点―検診担当者から―
正影 三恵子西井 研治上岡 博田端 雅弘瀧川 奈義夫木浦 勝行
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2006 年 46 巻 7 号 p. 877-881

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抄録

市町村合併と結核予防法の改正が同時期に実施され,肺がん検診も大きな転換期を向かえた.高い受診率を維持してきた岡山県での胸部集団検診は,結核予防法改正後,大きな変化がみられ,これを機に問題点について検討した.第一には2004年度までと比べ受診率の低下が著しく,特に結核予防法から削除された64歳以下の肺がん検診のみの年代について,大幅な減少を認めた.第二には胸部検診を総合健診に組み入れて他の検診と同日実施した市町村が3から21と大幅に増加し,結果的に胸部検診の受診機会が減少することになってしまった.第三には検診負担金徴収額の増額や精密検査費用の保険診療への移行が,受診率の低下へ拍車をかけたと考えられる.さらに,自治体合併にともない入札が通常手段となり,精度管理を無視した安価な検診機関が委託先として選択されるようになってしまった.この状態が続けば,高い精度管理下の検診でなければ意味がないとされる肺がん検診は,その存在自体が意味を失ってしまう.国,自治体,検診機関が連携し,結核肺がん検診の持つ意味を再度検討することで,「生きた検診」「医療費削減」「生涯健康生活」につながる「よりよい検診システム」の道をみつけることが急務である.

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© 2006 日本肺癌学会
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