2007 年 60 巻 3 号 p. 146-150
直腸肛門部悪性黒色腫は稀な疾患で, 予後不良である. 今回, 外科的切除と免疫監視療法により, 長期生存が得られた症例を経験したので報告する.
症例は69歳の女性で, 下血を主訴に来院. 下部消化管内視鏡検査で直腸肛門部悪性黒色腫が疑診され, 1998年1月局所切除施行. 病理診断は悪性黒色腫で, 1998年2月直腸切断術およびリンパ節廓清を施行した. 術後の病理診断では, 腫瘍の残存やリンパ節転移は認めなかったが, その後異時的に小腸, 心嚢傍脂肪織, 左腋窩リンパ節, 臀部脂肪織に再発を認め, 各々に対して外科的切除を施行した. 8年1カ月経過した2006年2月現在, 再発徴候なく経過観察中である.
転移を併発した悪性黒色腫は予後不良であるが, 自験例では早期発見および積極的な外科的切除が有効であったと考えられた.