2007 年 113 巻 4 号 p. 158-167
構造層序や化石年代から三波川変成帯(緑泥石帯)の砂質・泥質片岩の原岩は,後期ジュラ紀以降に堆積したと推定される.徳島県美馬市南部の三波川変成帯の原岩層を特定するために,同地域の砂質片岩および泥質片岩の全岩化学分析を行った.調査地域の三波川帯は,岩相や地質構造から北部と南部に区分される.調査域の砂質片岩の地球化学的特徴は,その原岩層が南部秩父帯の中-上部ジュラ系ではないことを示している.砂質片岩と泥質片岩の地球化学的な特徴は,北部と南部がそれぞれ四万十帯北帯のKS-IIユニット(コニアシアン-カンパニアン)とKS-Iユニット(アルビアン?-前期コニアシアン)を原岩層としていることを示している.これらの結論は,四国の三波川変成帯の低度変成岩の多くがアンダープレーティングに由来する四万十帯北帯の深部相であることを意味している.