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T-for-H交換反応における各種エーテルへのトリチウム取込み
今泉 洋狩野 直樹平松 城
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1998 年 47 巻 12 号 p. 897-903

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抄録

炭素原子に直結したH原子がT-for-H交換反応に関与できるかどうかを明らかにするため, 鎖式 (または環式) 構造を持っエーテルとT標識化合物との間のT-for-H交換反応を, 固液系において30-80℃の範囲で速度論的に観測した。用いたエーテルはローンペアをもつ原子を有している。この交換反応には, 固体試料物質として, T標識OH基 (すなわち, OT基) を持っポリ (ビニルアルコール) を, 液体試料物質として, 3種のエーテル (テトラヒドロフラン (THF) , ジブチルエーテル (DBuEt) , ジイソプロピルエーテル (DIProEt) ) をp-キシレンに溶かした溶液を, それぞれ用いた。溶液の濃度は, それぞれ2.0, 1.0, 1.0mol・dm-3である。この交換反応から得られたデータにA″-McKayプロット法を適用し, この反応における各種エーテルの速度定数 (k) を算出した。このようにして得られたkと以前得られたkとをそれぞれ相互比較した結果, 以下の五つが明らかとなった。 (1) 各種エーテルが有するH原子は, T標識化合物との接触により, T-for-H交換反応に関与することができる。 (2) 各種エーテルは, 物質に含まれる官能基 (OH基, SH基, NH2基, CHO基など) と同様に, この交換反応を起こす。 (3) エーテルの反応性は, (THF) > (DBuEt) > (DIProEt) の順である。 (4) 各種エーテルの反応性における温度依存性は官能基を有した化合物 (たとえば, フェノール, チオフェノール, アニリン, ベンズアルデヒド, など) よりもかなり小さい。 (5) この交換反応に関与するエーテル中のH原子は, α炭素に直結したH原子と推測される。

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