肺癌
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第22回肺癌集検セミナー
検診受診率の向上を目指して
正影 三恵子西井 研治堀田 勝幸田端 雅弘瀧川 奈義夫木浦 勝行上岡 博
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2007 年 47 巻 6 号 p. 743-750

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抄録

近年,岡山県においては大幅な検診受診者数の減少がみられている.このような状況が続けば,本来検診の目的である肺がん死亡率減少効果が弱まり,ひいては現行の肺がん検診の存続自体を危うくすることになり,その結果,将来肺がん検診実施市町村が大幅に少なくなってしまう可能性がある.現在でも肺がん検診未実施市区町村が全国には109(約5%)もあり,他のがん検診に比べて肺がん検診の必要度は低いとみなされ,予算配分で肺がん検診より優先すべき事業があるとまでいわれている.このような状況を踏まえて,現場の検診担当者の肺がん検診に対する率直な意見を収集し,問題点の把握を試みた.結果の集計をみると,専門的な検診に関する情報や知識が実際の現場に生かされていない,検診担当者が肺がんをほとんど知らない,検診担当者は精度管理の重要性を理解しているにもかかわらず,入札時の仕様書には精度管理項目が見当たらないなどの問題が認められた.結核検診と肺がん検診の違いが理解されていない面もあった.驚くべきことに,検診の目的そのものが回答できない担当者もあり,このような担当者ではがん検診の必要性を説いたり,住民に検診を勧奨したり,また厳しい財政状況の中,財務担当者に精度管理を重視した検診機関選定の方法を説得することは困難である.すべての肺がん検診に携わる行政機関の担当者は国が呼びかけている「精度管理の上に成り立つがん検診」が何かを理解し,住民に対して平等にしかも十分に検診機会を与えられるように努めねばならない.検診機関の職員も同様にその責任を果たすことで肺がん検診の受診率向上を目指さねばならないと思われた.

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© 2007 日本肺癌学会
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