日本気管食道科学会会報
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症例報告
長時間作用型吸入抗コリン薬(チオトロピウム)による喉頭の乾燥症の1例
中村 毅三枝 英人愛野 威一郎大久保 公裕
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2007 年 58 巻 6 号 p. 533-536

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抄録

近年,本邦においても,慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増加が懸念されている。COPDの薬物療法には,吸入抗コリン薬が,単独でも十分な効果があり,全身的副作用が少ないことから多く使用されている。われわれは,最近開発された長時間作用型の吸入抗コリン薬(チオトロピウム)の使用により,喉頭内腔が湿潤性を失い嗄声をきたした症例(“喉頭乾燥症”と仮称した)を経験したので報告する。
症例は,60歳の男性。2カ月前から,声の出し難さと,嗄声が出現し,改善しないため,当科を受診した。喉頭内視鏡で観察を行ったところ,披裂間部および声帯後方に痂皮を伴う粘膜の湿潤性低下を認めた。詳しく問診を行ったところ,2カ月半前から,COPDに対して長時間作用型の吸入抗コリン薬(チオトロピウム)が投与されていたことが判明した。そこで,同薬を中止したところ,約1カ月で,喉頭内視鏡所見と嗄声は完全回復した。

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