環境工学研究論文集
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主成分分析を用いた窒素飽和状態の渓流の検出
川上 智規能登 勇二青井 透宮里 直樹森 邦広
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2007 年 44 巻 p. 93-98

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抄録

窒素飽和は大気からの過剰な窒素化合物の沈着により引起こされ、陸水の富栄養化や酸性化、森林の衰退をもたらすと考えられている。しかしながら、陸水が窒素飽和状態にあるかどうかを判断するためには、集水域における窒素の収支を測定しなければならないなど困難な面が多い。そこで本研究では、人為的汚染の無い渓流を対象に、それらの渓流が窒素飽和状態にあるのかどうかを判断することを目的として、主成分分析等の多変量解析を適用した。富山県内95箇所、群馬県内10箇所の渓流水の水質データのうち、pH, 電気伝導度, Na+, K+, Mg2+, Ca2+, Cl-, NO3-, SO42-, Acid Neutralizing Capacity (ANC) の10項目を用いて解析を行った結果、第2主成分Z2-第3主成分Z3平面上に窒素飽和区分境界線を設定することができ、この境界線より下の領域に位置する渓流水は窒素飽和であると考えられた。この境界線により「窒素飽和」に区分された渓流は、そのすべてが実際に窒素飽和状態であった。一方、「非窒素飽和」と区分された渓流であってもこの区分境界線近くにプロットされる渓流は窒素飽和状態に近づいている可能性が示唆された。

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