応用統計学
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精確ロジスティック回帰の近似推定値
大倉 征幸鎌倉 稔成
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2007 年 36 巻 2-3 号 p. 87-98

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抄録

ロジスティック回帰モデルを利用する際,最尤法によりパラメータ推定を行うのが一般的である.しかし,最尤推定量は完全分離または準完全分離の場合に存在しないことが知られている.また,発現確率が極端に小さい(または大きい)場合やパラメータ数に比べて標本サイズが小さい場合も妥当でないことが知られている.このような状況において,精確ロジスティック回帰推定法が有用であると言われている.しかし,すべての統計ソフトで精確ロジスティック回帰推定法を実施できるわけではない.Firth(1993)は最尤推定量のバイアスを取り除く方法を提案したが,完全分離または準完全分離に近い状態での検証は十分行われていない.本報告の目的は,完全分離または準完全分離に近い状態において,最尤推定値またはFirth法推定値を精確ロジスティック回帰推定値に近似する方法を検討することである.また,パラメータ推定の改善のためのデータ構造に関する近似法をシミュレーションにより検討する.尤度関数をTaylor展開することにより,最尤推定値またはFirth法推定値を精確ロジスティック回帰推定値に近似することが可能であることが分かった.さらに,最尤推定値はデータ構造を考慮することにより,近似の精度の改善が可能であることを示した.

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