2008 年 22 巻 4 号 p. 705-708
症例は65歳女性,44歳時より慢性腎不全に対し透析を導入されていた.41歳時に右乳癌に対し根治的切除術および放射線治療,化学療法を施行された.その後前胸部に皮膚潰瘍が出現し,保存的に加療されていたが63歳頃より肋骨が露出し,出血と骨髄炎を認めるようになったため手術を行った.第2・3・4肋骨と胸骨の一部を切除し,広背筋皮弁を充填した.胸壁の補強は特に行わなかった.術後は筋皮弁の感染や壊死を認めず,軽快退院した.現在まで骨髄炎の再燃は認めていない.乳癌術後の放射線治療により皮膚潰瘍が生じ,時には胸壁深部に到る骨髄炎を引き起こすことが知られている.壊死組織の十分なデブリードメントと血行豊富な筋皮弁充填を行うことにより,良好な経過を得ることができた.