日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
症例
肉腫型胸膜悪性中皮腫の 1 例
佐藤 勝明上見 嘉子有賀 美紀子西田 靖昌谷本 一夫上田 善道勝田 省吾
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 47 巻 4 号 p. 301-305

詳細
抄録

背景 : 肉腫型中皮腫は, 腫瘍細胞が体腔液へ出現することが少なく細胞診での診断は困難な場合が多い. 今回われわれは, 胸水中に少数出現した肉腫型中皮腫細胞を指摘できた 1 例を報告する.
症例 : 77 歳, 男性. アスベストの暴露歴があり, 胸部 CT で悪性中皮腫が強く疑われ, 胸水細胞診で悪性の疑いと推定された. 胸腔鏡下胸膜生検組織で肉腫型悪性中皮腫と診断され, 約 1 ヵ月後に呼吸不全で死亡した. 胸水細胞診では, リンパ球が多い背景に, N/C 比が大きく, 核小体が明瞭で, 中心性に位置する核と厚い細胞質をもつ大型異型細胞が孤在性に認められた. 生検組織では, 核小体が目立つ水泡状核と好酸性細胞質からなる紡錘形から類円形の細胞が, 線維性間質を豊富に伴い浸潤性に増殖していた. 免疫組織化学では, cytokeratin (CAM5.2), calretinin, D2-40, thrombomodulin, CD44s が陽性であった.
結論 : 肉腫型中皮腫細胞を, 細胞像のみから各種の肉腫, 肺大細胞癌あるいは多形癌細胞と鑑別することは困難である. 肉腫型中皮腫の診断には, 細胞診, 胸膜生検およびそれらの免疫染色に加えて, 画像所見を含む臨床情報を合わせた総合的な判断が必要である.

著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top