日本臨床細胞学会雑誌
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症例
腹膜脱落膜様中皮腫の 1 例
佐藤 勝明小竹 友美橋本 哲夫西田 秀昭上田 善道田中 卓二勝田 省吾
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2008 年 47 巻 4 号 p. 306-309

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抄録

背景 : 脱落膜様中皮腫は, 上皮型中皮腫のまれな一亜型である. 今回われわれは, 腹水細胞診で検討する機会を得た腹膜脱落膜様中皮腫の 1 例を報告する.
症例 : 75 歳, 男性. 腹水貯留と左腋窩リンパ節腫脹を指摘された. FDG-PET では広範囲の腹膜に多発性に異常集積を認めた. 腹水穿刺検体の細胞診では, 多数のリンパ球からなるきれいな背景に, 孤在性の大型異型細胞が散見された. 異型細胞は, 中心性に位置する類円形核をもち, クロマチンは粗顆粒状を呈し, 核小体が目立った. 細胞質は豊富で厚みがあった. 腹腔洗浄液細胞診でも, 同様の異型細胞が小型集塊状あるいは弧在性に多数認められ, リンパ球が多く混在していた. 開腹切除された大網腫瘍の組織像は, 核小体の目立つ水泡状核と豊富な好酸性細胞質をもつ腫瘍細胞が一様にシート状増殖しており, 間質にはリンパ球が目立っていた. 免疫組織化学的には, cytokeratin 5/6, calretinin, D2-40, thrombomodulin, WT1 がびまん性に陽性, HBME-1, mesothelin が一部に陽性であった. 腹膜脱落膜様中皮腫と診断されたが, 化学療法の効果はなく, 発症後約 5 ヵ月で死亡した.
結論 : 脱落膜様中皮腫細胞の特徴は, 多数のリンパ球を含む背景, 豊富な細胞質, 明瞭な核小体にあり, 細胞像からも診断可能と考えられる.

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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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