木材学会誌
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論文特集「温暖化防止に寄与する“木材”」
スギ材からL-乳酸存在下で分離したパルプ状繊維の特性
梶本 武志橘 熊野前田 育克久保田 静男畑 俊充今村 祐嗣
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2008 年 54 巻 6 号 p. 319-326

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抄録

スギ材のL-乳酸蒸解によって産生したパルプ状繊維の特性評価を行った。スギ材をL-乳酸存在下,200℃,1時間密閉系において蒸解させた結果,パルプ状繊維とL-乳酸蒸解木材液化物に分離した。パルプ状繊維について,分子量測定,X線回折,電子顕微鏡観察,固体 13C NMR,赤外分光分析により分析した。パルプ状繊維は,結晶型がI型の天然セルロースで,結晶化度は23~25%,分子量は1.1×106-1.5×106,乳酸ユニット構造を含有するセルロースエステル誘導体であることを見出した。スギ材をL-乳酸存在下で蒸解することにより,酸加水分解及び熱分解によって脱リグニン化が起こり,木材から機能性セルロースが産生できることを明らかにした。

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© 2008 一般社団法人 日本木材学会
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