皮膚の科学
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症例
好酸球増多と多彩な皮膚症状を呈し,イベルメクチンが奏効した1例~寄生虫感染症が疑われた1例~
鷲見 浩史湊原 一哉
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2008 年 7 巻 5 号 p. 605-609

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抄録

68歳の女性。北関東出身者であるが,第二次世界大戦中にパラオに居住歴がある。初診時,体幹,四肢に強いそう痒感を伴い,掻破痕を混ずる小豆~大豆大程度の丘疹が散在性に多発し,さらにびまん性の浮腫性紅斑も混じる多彩な皮膚症状を示していた。当初,好酸球増多症候群を疑い精査を進めたが,糞線虫をはじめ,複数の抗寄生虫抗体に強陽性を示した。ホルマリン・エーテル法による糞便検査では陰性であったが,臨床症状とあわせて糞線虫をはじめとする線虫類感染症による好酸球増多を疑い,患者の了解を得てイベルメクチンを投与したところ著明な改善をみた。以降,再発も認めない。現在では糞線虫症は新たに罹患することは少ないとされているが,糞線虫症に限らず寄生虫感染症は今後,高齢化社会の到来や昨今の無農薬野菜,ペットブーム,焼肉ブームなどといった流行もあり,多くの症例が経験されるものと考えられた。

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© 2008 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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