2008 年 36 巻 p. 149-158
本研究は, 風力発電の立地に伴う環境論争を題材として, 交渉シミュレーション (模擬的なゲーム社会を構成する様々なアクターを, 与えられた情報やルール, 役割に基づいて参加者が演じ, 交渉の実験を行うもの) を予備的に実施し, 論争の解決策を模索するとともに, 本格的なシミュレーションの実施に向けて, この技法の有用性と今後の課題について分析した.その結果, 第1に, アクター間相互の信頼感や手続き的公正感などにおける交渉のフレーミングとメディエーション機能の重要性が示唆された.第2に, 交渉シミュレーションが参加者に対して, 態度の変容や何らかの気づきを与えた効果が認められた.第3に, 解決策には今後の継続的な対話を確保する「共同事実確認」の必要性を認識したものも出された.