2009 年 47 巻 1 号 p. 22-27
土壌微生物の細胞性粘菌 (Dictyostelium discoideum) はその単純な体制から,発生・分化のモデル生物として長年研究されてきた.しかし,2005年の全ゲノム読解終了は細胞性粘菌の研究に新たな局面をもたらした.細胞性粘菌ゲノムはその中に,これまでに知られているどの生物よりも豊富なポリケタイド合成酵素遺伝子をもつことが明らかになった.さらに,その中には天然のドメイン交換モデルになりうると考えられる構造をもつ新規ハイブリッド型ポリケタイド合成酵素も存在していた.この新規ハイブリッド型酵素の構造と機能はどうなっているのか.また「土壌」という環境中で,細胞性粘菌はどのようにポリケタイドあるいはポリケタイド合成酵素を使い,その巧みな生存戦略を展開しているのだろうか.