ごみ焼却炉排ガス中の水銀はバグフィルターによって除去されうるが, その除去機構はいまだ明確ではない。本研究では, 乾式フィルター層ではどのような因子が水銀除去に重要であるかを, 飛灰焼成飛灰活性炭を用いて詳細な基礎実験を行った。飛灰においては未燃炭素含有量, 温度といった因子が, また焼成飛灰に活性炭を添加した場合には活性炭の混合割合, 温度, 塩化水素濃度といった因子が水銀除去に大きな影響を及ぼすことがわかった。さらに, X線回折分析から粉粒体中での水銀の形態は塩化第一水銀と推定された。これらの実験結果から, 水銀は粉粒体中で吸着還元反応と, それに続く還元脱着反応の二段階の反応が生じていると仮定し, モデル化を行った。その結果, 還元脱着反応の反応速度定数が吸着還元反応の反応速度定数に比べて非常に小さく, 実験で観察された現象が説明できた。乾式フィルター層での水銀除去機構は化学反応を伴った吸着であるといえる。