2009 年 1 巻 2 号 p. 195-198
症例の概要: 患者は40歳女性で,間歇的な激痛を伴う開口障害を主訴に来院した.症状発症と同時期に左側オトガイから顎角部の皮膚に萎縮が発現し,Skin Biopsyの結果Local Panatrophyと診断された.CTおよびMRI検査にて関節円板の転位と下顎頭の変形を認めたが,下顎頭の可動性は良好であった.神経内科検査において障害は見つからなかった.筋電図検査にて開口障害発症時に左側咬筋,側頭筋にMVCの3倍の筋活動を認めたため,半側咀嚼筋スパズムによる開口障害と診断した.咬合挙上したオーバーレイ可撤性義歯を用いて補綴学的に10年間対処療法を行い,症状をコントロールすることができた.
考察: EMG検査を参考にオーバーレイ可撤性義歯の咬合高径を決定したことがスパズム発症の劇的な減少に貢献したと考えられた.
結論: 咬合挙上したオーバーレイ可撤性義歯を用いることで,長期間咀嚼筋スパズムに対して良好にマネージメントするとともに,咀嚼機能の回復も図ることができた.