2009 年 65 巻 2 号 p. 175-186
著者らの研究室で現在進行中の「近世以前の日本の土木遺産の総合調査」では,今まで認知されていなかった優れた土木遺産が次々と明らかになっている.その中で,リスト作りに加えて,1)価値評価基準の樹立,2)保存・活用事例の収集,3)地域的な特徴の抽出を三大目標として,収集結果の分析を同時並行的に進めている.本論文は,現地調査がほぼ完了した中国5県について,3)の地域的な特徴の抽出を中心にまとめたものである.そして,調査対象である近世以前(江戸期を含む)と,かつて著者らが調査に携わった近代以降の土木遺産との県別対比を行うことで,土木遺産を中心に見た時の地域的特徴が,該当する地域の発展とともにどのように変化していったかを分析する.本研究の成果は,「景観法」によるまちづくりの,一つの方向性を示すものでもある.