2009 年 70 巻 6 号 p. 1782-1785
症例は63歳,男性.発熱と肛門痛を主訴に来院.直腸(Rb)に進行癌を認め,潰瘍底の穿通による骨盤内膿瘍を合併していた.fecal diversion目的で回腸人工肛門を造設し,炎症所見が改善した後,術前化学照射線療法(chemoradiation therapy:以下CRT)を行った(5-FU 500mg+CDDP 10mg/day,1-5days,照射線量は計40Gy).有害事象および感染病巣の再燃はなかった.CRT終了から6週目に内括約筋切除を伴う肛門温存直腸切除術を施行した.病理所見はpA,pN1,M0,stageIIIa.腫瘍組織内に多くの壊死組織巣を認め,組織学的効果判定はGradeIbであった.術後1年を経過し再発の徴候は無い.穿通合併直腸癌は局所再発の危険性が高いので術前CRTの意義は大きい.CRTを行う上で,骨盤内の感染をコントロールしておく必要があり,回腸人工肛門造設が有効であった.