システム農学
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研究論文
農地の持つ土壌侵食防止機能量のGIS をベースとした評価
-岡山県を事例として-
小川 茂男塩野 隆弘吉迫 宏島 武男
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2009 年 25 巻 3 号 p. 145-155

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抄録

農地の持つ多面的機能の一つである土壌侵食防止機能について、岡山県全域の農地を対象に検討を行った。ここでは衛星データやGIS データをベースとして用い、現在の土壌侵食量を推定するとともに、急傾斜の農地が耕作放棄された場合(傾斜1/20 以上の水田が、耕作放棄地化後長期間を経て、自然傾斜でかつ自然植生に戻った場合)を想定して侵食量を推定し、その差が農地の持つ土壌侵食防止機能量と定義し、算出した。計算を行う上で、USLE(汎土壌侵食量予測式)に基づいて計算することと、棚田で得られた実測値から求めた作物係数、保全係数(CP 値)を用いて、岡山県の農地全体を対象に土壌侵食防止機能量を求めた。その結果、棚田として耕作されている場合は1.4 t・ha-1・y-1 と低い土壌侵食量であるのに対し、棚田が放棄され自然傾斜になったと仮定すると、土壌侵食量が37.7 t・ha-1・y-1 に増加する結果となった。棚田では水平な田面を構築し、畦は急傾斜ではあるが植生管理をしていることにより、営農活動によって土壌侵食量が抑えられ、農地が土壌侵食防止機能を発揮しているといえる。また、ここで提示した評価手法は、日本であれば地域の特性を考慮して適用することが可能である。

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© 2009 システム農学会
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