目的:自立して社会生活を送る一般的な高齢者の義歯に対する主観的評価と「咬めること」,「食事中に外れないこと」,「痛くないこと」の3要因ならびに歯の欠損形態,咀嚼可能な食品との関連を明らかにすることを目的とした.
方法:対象は,平成19年度厚生科学研究「口腔保健と全身的な健康状態の関係について」の調査に参加した,新潟市在住で義歯を装着している79~80歳の256名とした.義歯の満足度と「咬めること」,「外れにくいこと」,「痛みがないこと」についてVAS値でアンケートを行った.さらに,欠損形態を宮地分類でグループ化し,義歯満足度との関連を調べた.また,15品目の食品が咀嚼可能かを調べた.
結果:義歯の満足度は,「咬めること」,「外れにくいこと」,「痛みがないこと」との間に相関があったが,一つの項目のみが突出して高い関連を示すことはなかった.宮地分類と義歯に対する満足度との間に,関連は認められなかった.義歯の満足度(VAS値)により分けた4群間では,不良群で咬める食品数が有意に低かった.
結論:義歯の満足度を高めるには,咬めて,外れにくく,使用時に痛みのないことが必要であることが確認された.一方,今回の調査からは義歯の満足度と宮地分類との間には関連が認められなかった.これは,難しい欠損形態でも義歯の製作や調整次第で,満足が得られる可能性を示唆すると考えられた.