日本門脈圧亢進症学会雑誌
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原著
当科における1型肝腎症候群の実態
楢原 義之金沢 秀典福田 健張本 滉智松下 洋子城所 秀子片倉 玲樹厚川 正則中塚 雄久坂本 長逸
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2009 年 15 巻 3 号 p. 227-233

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抄録

2004年から2009年までに当科に入院したのべ929例の肝硬変患者のうち,入院時あるいは入院中にクレアチニンが1.5 mg/dl以上を呈した腎障害合併肝硬変患者142例を対象とし,International Ascites Clubの診断基準に基づく1型肝腎症候群症例の実態について検討した.対象中急性腎障害を106例に認め,27例が1型肝腎症候群であった.1型肝腎症候群の平均Child-Pugh scoreは12.4点,総ビリルビン平均値は15.1 mg/dl,クレアチニン平均値は3.22 mg/dlであった.誘因は感染症16例,腹水穿刺5例が多く,その他6例であった.治療としてアルブミン投与21例,terlipressin投与11例,ドパミン投与11例,ノルアドレナリン投与1例,血液濾過透析施行1例などが行われた.Terlipressin以外の通常治療を行った16例中15例は死亡し,平均生存期間は12日であった.1型肝腎症候群は急性腎障害合併肝硬変例の25%にみられ,重度な肝不全を基盤としており,通常治療では予後は極めて不良であった.

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© 2009 日本門脈圧亢進症学会
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