現代社会学研究
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社会階層と女性の不公平感の発現
岩間 暁子
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1992 年 5 巻 p. 62-85

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抄録

本研究の目的は、社会階層の観点から現代女性の不公平感の発現メカニズムを解明することにある。
本研究における公平とは社会的資源の分配公正である。公平がいかなる状態であるのかに関する各人の公平の判断基準を公平価値とし、現実の分配に関する評価を不公平感として扱う。不公平感はさらに、社会的不公平感と私的不公平感の二つの側面があると考えられ、それぞれは異なる発現メカニズムを持つという仮説を構築する。
まず第一に、人々の公平価値の多次元的構造を確証因子分析により明らかにする。第二に、不公平感の規定要因として社会階層と公平価値、達成志向をとりあげ、LISRELの構造方程式モデルを用いて社会的不公平感と私的不公平感の各々の発現メカニズムを解明する。
調査データを用いた分析の結果、公平価値は能力主義、努力主義、実績主義の下位次元により構成される功績主義、ニーズ主義、機会主義という3つの次元を持ち、特に功績主義との関連が強いという知見が得られた。
不公平感の発現メカニズムについては社会的不公平感と私的不公平感では発現メカニズムが異なるという仮説が実証された。社会的不公平感は主に社会階層によって規定される公平価値を基準にそれとの乖離によって生みだされるのに対し、私的不公平感は達成志向が高いにもかかわらず社会階層が低いという矛盾によって生まれることを明らかにした。

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